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1 マンション管理費等滞納問題について


はじめに
 昨今の不況の中、マンションの管理費、修繕積立金等を滞納する案件が増え問題となっています。
 マンションには、家族構成や職業等異なる様々な世帯の方々が入居されています。それら方々の共同の利益を増進し、良好な住環境を確保するために管理規約が定められており、それはマンションの住人として最低限守らなければならないルールで、管理費等の支払い根拠はその管理規約に定まっています。
 管理費等の滞納があっても、「今は少額だから大きな影響はない」「そのうち支払ってもらえるだろう」「遅れながらでも時々入れてもらえるから未だ何もしなくていいだろう」「管理会社が回収してくれるだろう」等々考えているうちに更に滞納額が増えて大変なことになりかねません。

何故大変なことになるのか?
 これは管理費の性質なり性格になりますが、管理費等は、管理組合の唯一の収入源であり、日常の管理や修繕に使われる等マンション全体の現在及び未来のために充てられるお金です。
 厄介なことに、その支払いは毎月となっており、区分所有者である限りは支払い続けないといけないものです。住宅ローンに比べると少額ですが、じわじわと毎月一定額増えてゆき、気がついた時には高額になっていることも多々あります。 そうなると、どうなるでしょうか? 管理費等が不足することになると、きちんと支払っている方々も満足のゆくサービスを受けられなくなるばかりか、修繕計画にも影響が大きくなり、ひいてはマンションの資産価値への影響も及ぼすことになり、俗に「マンションは管理を買え」ということがおかしくなります。
 それでも、滞納者はエレベーターを利用するなど共用部分を利用したり、管理会社や清掃会社等のサービスは受けています。きちんと支払っている方々からすれば、納得がいかないのではないでしょうか。
 また、他の住人の中に「あの人が払わないで済んでいるのなら、うちも今月苦しいから払わないでおこう」との気持ちが芽生え、区分所有者間に不公平感が生じることになり、新たな滞納者が増えることになりかねません。

 何故滞納が起きるのか?
 これには様々な理由が考えられますが、もちろん圧倒的には滞納者の経済状態が挙げられます。
 分譲マンションを購入する際は、様々な諸経費等も含めて予算を組み購入するため不足になることは基本的にはないと思われます。
 しかし、購入後毎月必要となる管理費等については、様々な理由等により毎月支払えないため滞納という問題が生じています。
 もし、住宅ローンを滞納した場合、銀行は最終手段として抵当権等に基づきそのマンションの競売を申立することになるため、それを避けようと一生懸命払おうとします。
 他方、管理費等については抵当権がなく、すぐには競売にもならない、又身内に支払うため甘えからか、どうしても優先順位が下がり、結果として滞納が発生します。
 他には、管理組合、管理会社なり分譲会社の対応が悪い、行方不明である等々が理由として挙げられます。

 管理会社の督促業務及び責任について
 うちのマンションは管理会社が管理しているから、万一回収出来なくても管理会社に責任を取ってもらえるから大丈夫と思われている方はいらっしゃいませんか?
 通常、確かに管理会社は督促業務を行いますが、管理委託契約書の定めにより方法、期間等が定まっており、その範囲内のことしか出来ず、一定期間経過後の未収管理費等について免責される旨の規定が設けられていることが多いです。
 したがって、最終的には管理組合が主体となって、またその責任において督促をしなければなりません。 

 そのまま放置しておくとどうなるか? 
 まず挙げられるのは、時効の問題があります。最高裁において、平成16年に管理費等は定期給付債権(民法169条)に当たり、5年の消滅時効が適用されるとの判決が出されました。
 そのため、特に滞納期間が4年を過ぎている場合、時効を中断させる方法(例:裁判上の請求など)を早期に行なうべきです。通常の督促をしている間にも時効は進行しますので注意が必要です。
 裁判上の請求などをした結果、時効が中断され消滅時効にかからないだけでなく、いわゆる区分所有法第8条の規定により、後に売買や競売等で新たに区分所有者となった特定承継人に対しても同様に請求できるため、その意味でも必要性があるといえます。

 管理組合としてどう対処すべきか?
 本来であれば、管理費等の重要性を説明して、任意に支払ってもらいたいところですが、一般的に滞納金額が増えるとそれも難しくなります。
 また、マンションの理事等は1年ないし2年の予め定められた輪番表による持ち回りにより変わるため、同じマンション内で当事者となるのを避けたい又は対処方法が分からないなどにより、その意思決定が遅れた又は先延ばしになることもあります。
 経験上、早期に手続をとれば解決出来た問題も、時間が経つにつれ解決が困難になる傾向にあります。
 そこで、管理組合は管理費等の滞納があった場合の督促手順なり方法を予め定めておき、必要性が生じたときは、その定めに従い毅然とした態度で督促を行うべきです。    
 なぜなら、前述のとおり、管理費等は管理組合の唯一の収入源であり、区分所有者間に不公平感が芽生えると、この経済状況のもと第2、第3の新たな滞納が増えることにより、マンション会計の資金不足から必要な時期に適切な修繕等が出来なくなり、気が付いた時にはマンションの管理は火を見るより明らかとなります。
 何より滞納額が少額のうち早期に対応をとることが一番大事です。

2 管理費等滞納に対しての具体的な対応 

 管理費等の滞納がある場合の具体的な対応については次のような方法があります。
  ① 普通郵便・電話・訪問による督促
  ② 配達証明付内容証明郵便による督促
  ③ 支払督促の申立て
  ④ 少額訴訟の申立て
  ⑤ 通常訴訟の申立て
  ⑥ 強制執行の申立て など
 これらの方法につき特に決まった順序はなく、滞納期間・滞納金額・相手方の状況など事案に応じて、最適な方法を早期に取ることが大切です。
 一般的に、「①普通郵便・電話・訪問による督促」や「②配達証明付内容証明郵便による督促」の対応は既にされている管理組合も多いかと思われます。
 その際、滞納者から任意の支払いがあれば問題にはならないのですが、現実には中々難しいものがあります。
 そこで、滞納が長期化・高額化する場合は、「③支払督促の申立て」、「④少額訴訟の申立て」や「⑤通常訴訟の申立て」を次の方法として考えなければなりません。
 これらそれぞれの方法には、それぞれメリット・デメリットがあり、滞納金額なり相手方の状況を考慮のうえ選択する必要があります。
 ただ、同じマンション内で法的手段をとることになるため、「滞納者が行方不明で時効にかかるのを防ぎたい」や「再三任意の支払いの和解をしたが一向に守ってもらえない」など、法的手段をとる目的を明らかにしたうえで進めるべきです。
 訴訟手続の中で、滞納者に管理費等の重要性を認識してもらい、任意の分割返済なりの和解ができれば解決するのですが、滞納者が行方不明や裁判所へ不出頭の場合、勝訴判決が出て訴訟手続が終わることになります。
 この場合、滞納者の勤務先が分かればその給与などを、預金口座が分かればその預金口座を、外部オーナーで管理費等を滞納している住戸を他の人に貸して家賃を貰っている場合はその家賃を差押える方法もあります。

3 法的手続をとるメリット

裁判などの法的手続をとるメリットとして、以下のものが挙げられます。
 ①滞納者と話し合う機会が生じる可能性がある。
 法的手続をとるまでは、訪問なり郵便などの方法で督促を繰り返しても留守であったり無反応なため解決出来なかったものが、滞納者が裁判所に出廷し、話し合いにより今までの誤解が解けたり、また管理費等の重要性を認識してもらい和解ができるなどです。 
 ②消滅時効を止めることができる。
 管理費等は5年の消滅時効にかかるため、裁判などの法的手続をとることによりこれを防ぐことができます。なお、裁判で勝訴判決を得たり、支払いを認めた和解が成立した場合、10年間は時効にかかりません(改めて10年間の時効がスタートします)。
 後に売買や競売等で新たに区分所有者となった特定承継人に対しても、区分所有法の規定により同様に請求することができるため、時効を阻止する必要性はより高いものになります。
 ③滞納者の財産を差し押さえることができる。
 滞納者が裁判所に出廷せずなどで勝訴判決が出た場合、勤務先が分かればその給与などを、預金口座が分かればその預金口座を、外部オーナーで管理費等を滞納している住戸を他の人に貸して家賃を貰っている場合はその家賃を差押えることができます。
 また、事案にもよりますが滞納のある住戸を競売にかけることも可能です。 
 これらは、勝訴判決を得た後、すぐに申立てることも可能ですが、時効にかかるまでの間に財産を見つけた後にすることもできます。 
 ④管理組合の強い姿勢を見せることができる。
 裁判などの法的手続をとるには、管理規約で定められた手続を経なければならず、滞納者だけでなく他の区分所有者にも「管理費等滞納は許さない」という強い姿勢を示すことができます。
 これが新たな滞納を防ぐという抑止力になることもあります。

4 費用対効果について



 確かに、法的手続をとることになると費用はかかります。滞納額は未だ少額だし、回収できるものなのかどうか分からないのに費用をかけてする効果はないのではと思われるかもしれません。 
 例えば、通常の貸金の滞納ならその金額と手続費用のバランスを意識して対応を考えるのも大切なことです。最悪、いわゆる費用対効果が合わないから諦めるというのも選択肢の1つかもしれません。
 しかし、管理費等の滞納の場合、果たしてそれでいいのでしょうか?
 繰り返しになりますが、管理費は貸金と異なり、その支払いは毎月となっており、区分所有者である限りは支払い続けないといけないものです。つまり、滞納者が区分所有者である限り、毎月一定額増え続けます。
 「今は少額だから大きな影響はない」などと考えていると、気がついた時には高額になっていたり、また、第2第3の新たな滞納が増えるという悪影響が生じかねません。 
 経験上、早期に手続をとれば解決出来た問題も、時間が経つにつれ解決が困難になる傾向にあります。
 このように、いわゆる費用対効果を考えることも大切ですが、管理費等の滞納は貸金とは違う側面も併せて有しています。
 幸いにも、管理費等の滞納の場合、管理規約の中に「違約金としての弁護士費用並びに督促及び徴収の諸費用を加算して請求することができる」と規定がある場合は、それを根拠に費用等を滞納者に負担させることができるものと考えられます。
 但し、事案によってはその規約の有効性が問題となったり、費用等の相当性が問題となるケースもあり、裁判例も分かれており、必ずしも認められるものとは限らないのが現状です。 

5 当事務所の基本方針など

 当事務所は、管理費等の滞納問題への対応の業務が多い事務所です。
 過去の経験からこの問題は、管理費等は毎月発生するため確定した金銭を回収することでは終わらない、また督促をして一旦支払った人でも再度滞納しやすい傾向があると考えられます。
 そのためにも滞納者の状況・性格等に応じて、まず管理費等の重要性を理解してもらい、今後も自主的に支払ってもらえるよう基本的に和解による解決を第一に目指しております。
 なお、当事務所の司法書士は、法務大臣の認定を受けた司法書士(認定司法書士)として、請求額が140万円を超えないものについては依頼者(管理組合)の代理人となり訴訟活動を、請求額が140万円を超える場合は、代理人にはなれませんが、書類作成や裁判所への提出などのほか、その後の手続の進め方についての具体的なアドバイスもさせていただく形でお手伝いさせていただきます。
 是非、少額問題の小さいうちから管理組合として対応を検討されることをお勧めいたします。

6 ご依頼いただいた場合の手続の流れ

 認定司法書士として訴訟代理人となる場合の一般的な流れは以下のようになります。
お電話又はお問合せフォームからのお問合せ
・マンション管理費、修繕積立金等の滞納問題がある場合、何らかの対応を取りたいがどうすればいいのか分からないなど、具体的な対応が決まってない場合でもお気軽に一度お問合せください。
→ お問合せフォームはこちらへ

     
面談、電話またはメールにて打ち合わせ
・認定司法書士が直接具体的なお話を伺います。
・ご要望により、貴マンションの理事会なり総会に出席させていただき、一連の流れを含め手続の詳細を説明させていただきます。初回相談料は無料ですが、場所によっては交通費実費を申し受けることがございます。
・その際、相手方(滞納者)の対応により変動はありますが、費用の概算をお伝えいたします。
  

    
  
内容証明郵便の発送
・着手金のご入金および必要書類が揃った後、滞納者の現住所を調査のうえ、管理組合の代理人として、滞納者に対して支払いを催促いたします。
・内容証明郵便の発送の結果、滞納者から分割返済の申入れがあった場合、債権者を管理組合・債務者を滞納者とする公正証書を公証役場にて作成し、終了となります。


    
  
通常訴訟の提訴
・内容証明郵便を発送するも、所定の期限までに回答がなく、また返送された場合、その滞納者を被告として通常訴訟を申立てます。
・なお、管理規約に費用等負担の規定がある場合、その定めに従い訴状を作成いたします。
  

    
  
口頭弁論
・滞納者である被告が出廷した場合、話し合いで管理費等の重要性を理解してもらい、滞納分の支払いはもちろん、今後毎月発生する管理費等も自主的に支払ってもらえるよう基本的に和解による解決を第一に目指します。和解ができれば和解調書が作成され、終了となります。


    
 
判 決
・もし、滞納者である被告が口頭弁論期日に出廷しなかった場合、証拠等に問題がなければ勝訴判決が出されます。
勝訴判決をとることにより、管理費等の5年の消滅時効を防ぐことができます。


    
 
強制執行
・もし滞納者の財産が判明していれば、それらを強制執行により差押えることができます。例えば財産として、勤務先が分かればその給与などを、預金口座が分かればその預金口座を、外部オーナーで管理費等を滞納している住戸を他の人に貸して家賃を貰っている場合はその家賃があります。また、事案にもよりますが滞納のある住戸を競売にかけることも可能です。
・この場合、当事務所は裁判所に提出する書類の作成者としてお手伝いさせていただきます。

※上記はあくまで一般的な大きな流れです。
 ・滞納のある住戸に売買競売があった場合
 ・滞納者が死亡し相続人がいる場合いない場合
 ・滞納者が破産宣告を受けた場合
 などは、上記手続の流れには該当しない又は別途の手続が必要となるものもあります。詳細はお尋ねください。

7 必要書類

一般的な必要書類は以下のとおりです。
 ・マンションの管理規約
 ・該当住戸の不動産の登記事項証明書(登記簿謄本)
 ・最新の滞納リスト
 ・直近の理事長選任議事録
 ・該当住戸の管理費等の金額の根拠となる資料
 (管理規約または変更の経緯の分かる議案書・議事録等)
 ・訴訟手続に移行することが決議された理事会議事録なり総会議事録
 (議案は当事務所よりご案内いたします)
 ・訴訟委任状(当事務所で準備いたします)