医療法人設立のメリットと注意事項


医療法人にするメリット

契約の主体

法人格を有することになりますので、法人名で銀行口座の開設や借入を行うことができることはもちろんのこと、賃貸借契約、職員との雇用契約、不動産を所有することができます。
また、医師個人と病院・診療所の経営を分けることにより、争いごとや借入れのときに医師個人ではなくて法人として対応することになります。

社会的信用

法に則った法人運営と情報公開により組織基盤がしっかり、さらに団体と個人の資産の区別が明確になりますから、社会的な信用が生まれます。
医業の永続性が確保されるので、地域社会への継続的なサービス提供が可能となり、患者様からの信頼向上も期待できます。

新規事業、分院

個人では認められていない分院開設が可能になります。例えば、新宿本院、渋谷診療所などに分けて事業を展開することができます。

税金面

個人の所得税の超過累進課税(最高50%)のみから法人税(最高実効税率約35%)との併用で節税メリットが得られます。医療法人では社会保険診療報酬分の事業税は税金がかからなくなるため、一般法人より実質的な税率は低くなる可能性があります。

医師個人の所得に給与所得控除が適用されます。

(1,000万円超の給与所得控除額)収入金額×5%-170万円
配偶者(夫に対する妻、妻に対する夫)や事業承継予定者などへ所得を分けることにより、院長個人の所得税での高い税率ではなく、家計全体としての節税メリットを得られます。
勇退するときに、退職慰労金を受け取ることができますので、リタイヤ後の生活設計が安定します。所得税法では退職所得は給与所得と分けられ、税制面で優遇されています。
退職慰労金で受け取ると、給与で受け取るより、所得税・住民税が軽減できます。
医療法人は配当が禁止されていますが、内部留保金を退職金支払い時に取り崩すことは、妥当な範囲であれば、損金参入が認められます。
退職慰労金の目安:最終報酬月額×役員在任年数×功績倍率(1~3倍)

経費算入できる支出項目が増えます。

例えば、借入金の利子や定期保険料などが経費算入可能になります。

赤字になった場合、赤字の繰越控除が7年間可能

個人では3年間可能です。

相続・事業承継対策 

法人の場合は、出資持分を少しずつ計画的に譲渡・贈与することが可能なため相続対策・事業承継対策に適しています。このタイミングを内部留保が積み上がる前や設備投資に伴う借入金を行った時期、多額の退職金支給があった年など、純資産の評価額が低い時期に譲渡又は贈与すると負担が少なくなります。

資金繰り負担が軽減できます。 

社会保険料診療報酬の受取時にあらかじめ税金を引かれないので、資金繰りの負担が軽減されます。また、社会的信用のアップや家計と法人会計の明確化により金融機関からの融資を受けやすくなることが考えられます。

医療法人設立の注意事項

利益金の配当が禁止

交際費の損金算入が制限

都道府県知事の指導・監督が強化

社会保険の強制加入

理事長は医師、または歯科医師である必要。